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前嚢収縮・後発白内障
 白内障手術を受けると、白内障以外に眼の病気が無ければ、ほとんどの患者さんでは見え方(視機能)が改善します。しかし、白内障手術後しばらくすると視機能が低下してくることがあります。その原因の1つに、後発白内障と前嚢収縮があります。これらは白内障手術後において発生頻度の高い合併症ですが、通常、簡単な外来治療で良くなりますので心配はありません。後発白内障と前囊収縮の原因と治療法についてご紹介します。
1. 後発白内障
① 原因
 水晶体は水晶体嚢という透明な袋に包まれています。近年行われている白内障手術では、水晶体嚢の前面(前嚢)を円形に切開し、水晶体嚢の中身を超音波で破砕吸引し、残した水晶体嚢の中に眼内レンズを挿入します。しかし、術後しばらくすると、水晶体嚢の中に残っている水晶体の細胞が増殖して水晶体嚢を濁らせてしまいます。軽度であれば症状はありませんが、進行すると眼内への光の透過性が落ちるため、視機能が低下します。これを後発白内障といい、術後5年で約20%の患者さんに発症するといわれています。点眼薬の使用や眼内レンズの形状を工夫することで進行を遅らせることが可能になってきましたが、現在のところ完全な予防法はまだありません。
② 治療
  治療法としては、レーザーを用いて濁ってしまった水晶体嚢に孔を開け、眼内に光が入るようにすることにより視機能は改善します。レーザー治療は痛みも無く、短時間で終わりますので、外来通院での治療が可能ですが、混濁の程度が強い場合は入院による手術加療が必要になることもあります。レーザーレーザーで破った水晶体嚢の破片が目の中に散らばるので、ゴミが飛んでいるように見える「飛蚊症」という症状が出ることがありますが、徐々に改善します。まれに炎症や眼圧上昇、網膜剥離などの合併症を起こすことがありますので、治療後に痛みや見づらいなどの症状がでた場合には眼科医に相談しましょう。後発白内障は一度治療すれば再発することは稀です。
2. 前嚢収縮
① 原因
  前にも述べましたが、白内障手術時には、混濁した水晶体を取り出すために水晶体嚢の前面を円形に切開します。この切開窓が術後小さくなる状態のことを、前嚢収縮といいます。これは切開窓の周囲に残った水晶体の細胞が炎症反応によって線維性の細胞に変化、増殖し、巾着絞りのように切開窓を狭くしてしまうことにより起こります。前嚢収縮は術後6ケ月以内が最も進行しやすいといわれていますが、ほとんど視機能に影響しません。しかし、瞳孔の中心部分にかかるほど進行して眼内に光が入りづらくなると、視機能が低下する原因となり治療が必要となります。後発白内障と同様に有効な予防方法はまだありません。
② 治療
 レーザーを用いて小さくなった切開窓に切り込み入れ、小さくなった切開窓を拡大させます。この治療も痛みは無く、外来での治療が可能ですが、前嚢収縮の進行程度が強く、レーザーで拡大できない場合は手術が必要になることもあります。まれに術後炎症、眼圧上昇などをきたすことがありますので、治療後、異常がある場合には眼科医に相談したほうがよいでしょう。
 
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