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白内障と疫学研究
 白内障のリスクファクター〔紫外線、放射線、ステロイド薬、糖尿病〕
 白内障の最も大きな要因は「加齢」ですが、それ以外にも様々な要因があることがわかっています。この項目では代表的な要因である紫外線、放射線、ステロイド薬、糖尿病について説明します。
1.紫外線
 紫外線は日焼けやシミ、シワ、皮膚がんの原因になることは広く知られていますが、眼の病気の原因にもなります。白内障も紫外線により発症・進行しやすくなります。紫外線の強い熱帯や亜熱帯地域在住者、屋外労働者、屋外スポーツなどで戸外活動時間が長い人は、白内障になる危険性が高いので、十分な紫外線対策が必要です。眼の紫外線対策としては、紫外線カット機能付きコンタクトレンズ、サングラスが最も有効です。眼鏡も紫外線カット機能が付いているものが多く、ツルの部分の幅が1 cm以上あるものはレンズと顔の隙間が広い側方から入る紫外線を効果的にカットするので有効です。帽子も有効ですが、それだけでは十分な効果はないのでサングラスやメガネの併用をお勧めします(図1)。
2.放射線
 水晶体は放射線の障害を受けやすいため、被ばく量が大きいと白内障になります。短期間に大量の放射線被ばくを受けた場合に発症の危険度は高くなり、原爆被ばく者では白内障が多いことが知られています。チェルノブイリ原発事故当時に短期間で比較的多くの放射線を浴びた作業者でも、被ばく後10年以上を経過した時点で白内障患者の割合が高いこともわかっています。福島第一原発の事故による放射線被ばくについては、事故当時に比較的大量の被ばくを受けた作業員を対象に、白内障学会が中心となり調査が進められています。医療従事者や宇宙飛行士における職業被ばくにより白内障を生じることも明らかになっており、放射線防御用の眼鏡使用が推奨されています。
3.ステロイド薬
 ステロイド薬には内服薬、吸入薬、塗り薬、目薬などがありますが、白内障の原因になりやすいのは全身疾患の治療に使用される内服薬と喘息などで使用する吸入薬です。ステロイド薬による白内障は発症すると進行が早く、数ヶ月から1年程度で手術が必要になるほど視力が低下することが特徴です。水晶体の後嚢部(眼の奥に近い部分)中央に皿状の濁りができるので(図2)、眼科医は濁りを見ただけでステロイドが原因であることがわかります。ステロイドは緑内障の原因にもなるので、使用する場合は必ず定期的に眼科を受診することが大切です。
4.糖尿病
 糖尿病に罹患すると健常者に比べ約5倍白内障になりやすくなります。特に60歳以下では影響が大きく、女性は男性に比べ白内障になりやすいことがわかっています。また、抗糖尿病薬の内服を始めてから5年以上経過すると非内服者に比べ約3倍白内障になりやすくなり、コントロールが悪い場合は白内障が急激に進行することがあります。糖尿病は白内障以外にも失明に直結する網膜症を生じ、全身的にも腎症や神経症など多くの合併症を起こすので、その予防は重要です。
 
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